レゴハリー・ポッターの22年の歴史を振り返る

2001年、魔法を題材にしたファンタジー作品『ハリー・ポッターと賢者の石』の映画が公開されました。映画の公開に合わせてレゴグループは配給会社とライセンス契約を結び、映画の名場面を再現したレゴのセットを毎年発売するようになります。レゴ社90年以上の歴史の中でも大ヒット商品となったこのレゴハリー・ポッターシリーズは、常にトレンドを取り入れ新パーツを増やしながら成長を続け、現在も新商品が出る度に世界中の人々を魅了しています。

本記事では、これまで発売された150を超える商品をいくつかピックアップしながら、レゴハリー・ポッターシリーズが歩んできた20年以上の長い歴史を詳しく解説していきます。

最初に2001年に発売された商品は、どれも映画第1作目の『ハリー・ポッターと賢者の石』をテーマにしたラインナップでした。この当時、ライセンス契約した版権シリーズは他にほとんど存在せず、レゴ社にとって未知の領域でした。レゴ社が独自のテーマに基づいていないスターウォーズのモデルを最初にリリースしたのは、このわずか2年前です。しかし、スターウォーズシリーズの大成功によりレゴ社の商品開発方針に変化が見られます。原作の大ヒットや映画化の話題と、当時世界中で社会現象を巻き起こしていたハリー・ポッターはスターウォーズとくまのプーさんに続く3番目のライセンステーマとして選ばれたのです。

4721ホグワーツの魔法教室。セットには厚紙の背景が付属している。

初期の製品特徴は、主人公のミニフィグたちはみな黄色で、ブロックのカラーリングも商品によってバラバラ。〈4721ホグワーツの魔法教室〉のようにオレンジやピンクなどカラフルな配色で構成さた商品も存在していました。パッケージデザインは魔法学校の教室をイメージしたような石造りのアーチが特徴的でした。

『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』をテーマにしたシリーズ

2004年の3作目『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』をテーマにした商品が発売される頃には、パッケージは全体が青色のシンプルなものに変わり、登場人物も映画の俳優に合わせた肌の色を採用したミニフィグたちが登場します。合わせて胴体のプリントも刷新されました。映画自体はこの3作目から主人公の成長とともに大人向けの成熟した物語へと内容が変化し始め、レゴのセットも映画に合わせてダークな場面を再現したセットが増えていきます。ブロックの配色も初期の色鮮やかなものから、落ち着きのある現在の系統に近いイメージで統一されました。

ドラゴンの卵に磁石を使用するなどレゴらしい遊び心あるギミックは残しつつ、2005年のセット (『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』をテーマにしたもの) も同様のアプローチを取っています。いわゆるミニモデルも同年に初公開されました。〈4695ナイトバス〉は、ミニチュアスケールで設定された最初のレゴハリー・ポッター商品でした。

4695ナイトバス。ポリバッグで販売された。

それ以降も映画に合わせてシリーズの発売は続きますが、並行してレゴ社は企業戦略の根本的な変更を発表しました。将来的な戦略を見越して、オリジナルシリーズにリソースを集中したいと考えたのです。これはすぐにレゴハリー・ポッターシリーズに影響を与えました。2005年には新作映画「炎のゴブレット」の4セットのみが発売されただけで、2007年の第5作『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』のホグワーツモデル1つで商品化は終了しています。3年間の休止を経て2010年に一度商品化されましたが、待望の最終作が公開された2011年にはレゴでの商品化はありませんでした。

その後、長らくレゴハリー・ポッターは生産中止のシリーズでした。復活はないと思われてきましたが、2018年に再び新しく生まれ変わったシリーズとして発売することが公式に発表されると、世界中のレゴファン&ハリポタファンが熱狂しました。この年に発売されたのは前作3タイトルをテーマにしたセットと、映画オリジナルのスピンオフ作品『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅(2016年映画公開)』『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生(2018年映画公開)』の新しいモデル、そしてコレクションミニフィギュアシリーズです。中でも〈71043ホグワーツ城〉は記念碑的商品となりました。

75979ヘドウィグと75952ニュートの魔法動物アドベンチャー

2018年に新しく生まれ変わったレゴハリー・ポッターシリーズは、さらに精密によりクオリティーの高いものへと進化していきます。

レゴ社はこれまでと同じテーマを作り直した商品にとどまらず、〈75979ヘドウィグ〉のような別視点からのアプローチにも力を入れていきます。遊ぶ用ではなく部屋に飾るのを想定してつくられたまったく新しいこれらの商品は、ハリー・ポッターファンの年齢層が大人に成長したことを反映していると言えるでしょう。

映画は物語が終盤になるにつれて、多くの主要キャラクターが命を落とすことが知られています。レゴ社も「この作品のテーマを尊重し、レゴ製品でも価値観や世界観を合わせていく」と発言しています。実際に、2022年にはこの映画のいくつかの重要なシーンがレゴで再現されました。

2023年にはハリー・ポッター映画の最終作『ハリー・ポッターと死の秘宝』を反映させた商品も発売されますが、全5作中3作が製作された『ファンタスティック・ビースト』が未完となっている以上、レゴハリー・ポッターシリーズは今後も開発が続いていくかもしれません。

レゴ ハリーポッター セット

同シリーズはこれまで数多くの商品が発売されてきましたが、種類でいうと実はそこまで多くありません。他の版権ものであるスターウォーズやDCコミックスのスーパーヒーローズなどは様々なテーマを取り上げレゴで再現してきました。中には完全にオリジナルモデルを出すこともあります。しかし、このシリーズでは主要テーマを繰り返し作り直し、同様のテーマで発売させる傾向が顕著です。

ホグワーツ特急(左から4708、4841、75955)

ホグワーツ特急はその最たる例でしょう。イギリスに実在するキングスクロス駅から発車しホグワーツ魔法学校へと主人公たち生徒を運ぶこの特別な汽車は、ハリー・ポッターのファンにとって物語が展開していく夢の詰まった最初の魅力的なモチーフです。

76405ホグワーツ特急-コレクターズエディション

人気があるためこれまでに5つのミニフィギュアスケールの商品が登場しており、年を追うごとに列車の外観は洗練されディティールがかなりリアルになってきています。最新の商品は〈76405ホグワーツ特急-コレクターズエディション〉で、出発地の9と3/4番線のホームがセットに含まれており、「ついにここまで来たか」と唸るほどの高い完成度です。 

このシリーズでは繰り返し扱った商品を発売されていると先述しましたが、マンネリ化しないよう積極的に面白いアイデアを取り入れています。〈4756叫びの屋敷〉では、シリウスブラックを犬の姿に変えることができる魔法のボックスで遊ぶことができ、〈4767ハリーとハンガリー・ホーンテール〉ではハリーが特殊なツールでつかむことができるマグネットボールがギミックとして設計されています。   

75945エクスペクト・パトローナム

また、新パーツも数多く開発されており、レゴ社の力の入れ様を感じることができます。〈71022ミニフィギュアコレクション〉や〈75945エクスペクト・パトローナム〉が発売される頃には、中くらいの長さのミニフィグの脚を持つ新しいミニフィグパーツが開発されました。1978年から続くミニフィグにおいて革新的だったこの脚パーツは、これまでの脚と子ども用の脚の中間に位置する長さでありながら関節がちゃんと可動するもので、10代のキャラクターにぴったりのサイズです。多くのホグワーツの学生にこの新しい脚パーツを採用しており、〈75810ストレンジャーシングス裏側の世界〉のようなハリーポッター以外のセットにも使われています。 

そして彼らが使う魔法の杖パーツも新しく開発されました。多彩な色で作られているこの杖は、これまでのパーツよりも圧倒的にリアルで素晴らしい杖に仕上がっています。この新パーツはすぐに他のテーマにも流用さるようになりました。例えばヴァイオリンを弾く少年 (ミニフィギュアのシリーズ21で発売)では、バイオリンの弓として使用されています。

セットテーマも種類が豊富になってきました。プリベット通りやハグリッドの小屋などの映画で何度も登場する主要なモチーフに加えて、映画に登場する回数が限られるダンブルドア軍団の訓練風景を描いた「必要の部屋」と呼ばれる場面などの商品化です。(必要の部屋は何度も出てきますが、用途が大きく異なっています)

76391コレクターズエディション

また、新しいフォーマットとして教科書シリーズが2021年に発売されました。変身術や呪文学のほか、魔法薬学や薬草学、占い学や闇の魔術に対する防衛術といった授業が学べるホグワーツ内の教室で、これらを本の中に凝縮した斬新なセットです。2023年には各寮生が生活の拠点となる談話室を紋章シリーズも新フォーマットとして開発されました。さらに〈76391コレクターズエディション〉は異なるアプローチです。シリーズを通してさまざまな要素を複合的に再現したコンセプト商品です。この商品の特筆すべき点は、ファンが自身の名前を書くためのスペースを空けたホグワーツの入学許可書ではないでしょうか。

他にもディスプレイを意識した商品が多く登場しています。〈76392ホグワーツ魔法使いのチェス〉はハリー・ポッターと賢者の石のチェスの試合を再現したものですが、ハリー・ポッターのテイストを取り入れたチェスセットはこれが初めてで、インテリアとして部屋に飾って楽しめるモデルになっています。

レゴ ハリーポッターのミニフィグ

レゴハリー・ポッターシリーズは、20年以上レゴグループとともに進化してきました。ミニフィギュアたちも同様にデザインで大きな変化が起きています。 

初期のミニフィギュアですが、当時は色のバリエーションも少なく、おなじみの黄色の顔と単純な服装でした。その中での唯一の例外は蓄光の専用ブロックを使用したスネイプ教授です。発売当時は小説自体が完結していなかったこともあり、彼のミニフィギュアは暗い衣装を纏ってハリーの宿敵のような雰囲気を醸し出しています。

蓄光の特殊ブロックを使用したスネイプ教授

グリンゴッツ銀行に勤めるゴブリンや屋敷しもべ妖精のドビーなど、人間以外のミニフィギュアも世界観を盛り上げるのに一役買っています。彼らは専用のヘッドパーツを開発することで再現されています。森の番人であるハグリッドもまた半巨人用の大きな身体が新パーツで作られました。これらも年月が経つにつれて洗練されていきます。ドビーたちは新しい金型とより細かく印刷された表情豊かなヘッドパーツとなり、ハグリッドも彼の肌の色合いをより正確に反映して再設計されました。

75967禁じられた森とアンブリッジの出会い


2018年のリニューアルでは、ハリーやハーマイオニーなどの人間キャラクターにもより正確なヘアパーツが追加されています。それだけでなくサブキャラクターにもそれぞれの個性を表現するための創造的なアプローチが行われています。ボーバトンの校長マダムマキシムはスカートを表現するために背の高い専用のスロープパーツを作り、ケンタウロスも既存の馬パーツではなく専用のものが作られ、〈75967禁じられた森とアンブリッジの出会い〉で初登場しました。他にもキングズリーシャックルボルトといった映画の脇役たちも続々とミニフィギュア化され、シリーズに厚みと華やかさがプラスされました。

20周年を記念したゴールデンミニフィグ(9種)も発売された。

そして、2021年にはレゴ®ハリー・ポッターシリーズ発売20周年を記念して、主要キャラクターの金色のミニフィギュアが発売されました。この限定版ミニフィグだけでなく魔法使いカードタイル(全16種類)も各セットに付き、コレクターがこぞって買い集める楽しい年となりました。

レゴ ハリー・ポッターの城 

ホグワーツ城(左から4709、4842、75954)

主人公たちの活動拠点であるホグワーツ魔法魔術学校は、レゴで幾度も商品化されてきました。ほとんどが購入したモデルをビルダー自身の手で補完的につなぎ合わせることでお城を自由に拡張できるよう設計されています。また、この学校であるホグワーツ城だけでなく、その周辺にある数多くの面白い場所もレゴで採用されました。

 〈4709ホグワーツ城〉が2001年に初登場した際は、教室や大聖堂、賢者の石を守る試練の部屋などが再現されました。 〈4730秘密の部屋〉はタイトルにある部屋を再現しており、4709のセットと接続してより大きな城を完成させることができるようになっています。翌年のホグワーツ城のセットは独立したモデルでしたが、このモジュラーシステムは2018年以降のホグワーツ城のモデルでも再び採用されています。〈75954ホグワーツ城〉は、〈75953空飛ぶフォード・アングリア〉や〈75948時計塔〉といったセットと連結させることができます。〈76389秘密の部屋〉以降のセットは、横だけでなく縦方向にも柔軟にモジュールを連結させることができるような設計方法に変更され、今までよりも高さのある城を作って楽しむことができるようになりました。

71043ホグワーツ城の組み立てレビュー記事はこちら

そしてホグワーツ城の巨大モデルも登場しています。〈71043ホグワーツ城〉はマイクロフィグサイズの小さい縮尺ではありますが、城全体を表したこれまでのシリーズで最大のセットとなりました。ホグワーツ城を創ったと言われる4人の創設者もミニフィギュアとなってこのセットで初登場しています。

映画シリーズの場面を幅広く再現しているこのホグワーツ城は、大広間やさまざまな教室だけでなく、秘密の部屋やカギ鳥の部屋などの地下セクションまでも表現した圧倒的な迫力があります。動く階段やドローレスアンブリッジの全面ピンク色の部屋、吸魂鬼の群れや小さなハグリッドの小屋、ボートハウスなどいつまでも見ていくなるような細かさで設計されました。

まとめ

いかがでしたでしょうか。J・K・ローリング氏が書き上げたハリー・ポッターは世界で最も人気のあるファンタジー作品の1つとなりました。最後の本が出版されてから15年以上経った現在でも、ファンが同作の魔法世界に虜になっているという事実は、舞台公演チケットが数分で売り切れ、脚本も大量に購入された『ハリー・ポッターと呪いの子』によって証明されています。また、発売当時の世界的な熱狂現象が過ぎ去った今でも小説やグッズが売れ続けているのは間違いなく作品の力です。そして、レゴハリー・ポッターのセットもまた人気シリーズとして売れ続けています。このレゴシリーズを買えば、誰でもホグワーツからの招待状なしで魔法の世界を体験することができます。

ハリー・ポッターを見ながら大人になった方も、小説や映画をきっかけに魔法世界にハマっているあなたも、レゴでできた完成度の高いハリー・ポッターワールドに触れてみませんか?

ここまでご覧いただきありがとうございました。それではまた。

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