【初心者向け完全版】LEGO MOCとは?オリジナルレゴ作品の作り方・考え方・始め方を解説

レゴが好きで組み立ててはいるものの、「説明書どおりに作るだけではどこか物足りない」と感じ始めた人が、必ず一度はたどり着くのが MOC(My Own Creation) という世界です。MOCとは、決められた正解のないレゴの遊び方であり、AFOL(大人のレゴファン)文化の中心にある創作行為でもあります。本記事では、MOCを「特別な才能がある人のもの」にせず、初心者が無理なく入っていくための考え方と手順を、Keibricksの視点で整理していきたいと思います。

MOCはよく「自由に作るレゴ」と説明されますが、それは本質ではありません。本質は、自分で決断し続けることです。どのサイズにするか、どこまで作り込むか、どこを省略するか。説明書付きセットではすべて用意されていた判断を、MOCではすべて自分で引き受ける必要があります。だからこそ、MOCは楽しくもあり、難しくもあります。

ここで重要なのは、MOC=完全オリジナルという誤解を捨てることです。既存セットを少し改造するだけでも、意思決定が介在した瞬間、それはMOCになります。屋根を一段高くする、窓の位置を変える、内装を作る、ミニフィグの視線を調整する。これらはすべて「設計行為」であり、MOCの核心です。

MOCに挑戦して止まってしまう人の多くは、「何もないところから何かを作ろう」とします。しかし建築でもデザインでも、完全な白紙から始めることはほとんどありません。必ず既存の構造、前例、制約があります。レゴも同じです。最初は既存セットという“骨格”を借りる方が、圧倒的に成功率が高くなります。

一度説明書どおりに組み、その構造を理解した上で、「ここはもっと広くできる」「この比率は不自然だ」と感じた部分に手を入れる。このプロセスは単なる改造ではなく、構造理解と設計訓練そのものです。特に建築系セットやCreator 3-in-1シリーズは、MOCへの移行を前提に設計されているとすら感じるほど、学びが詰まっています。

まずはお好きなセットを買って、拡張したりパーツを入れ換えたり、カラーチェンジして自分の好きなように改造してみましょう。

「アイデアが出ない」という悩みは、才能不足ではありません。多くの場合、観察不足です。LEGO Ideasを眺めると、優れたMOCの多くは「新しいもの」ではなく、「既存の題材をどう切り取ったか」で評価されています。建物全体ではなく一角だけを切り取る、完成形ではなく“途中の瞬間”を表現する、正面ではなく裏側を見せる。こうした視点のズレが、MOCの個性になります。

SNSでMOCを見るときも、「何を作っているか」より「どこを見せているか」に注目すると学びが増えます。公式セットも同様で、完成形をそのまま再現する必要はありません。「このセットの面白さはどこか」を抜き出し、別の形で再構成するだけで、立派なMOCになります。

芸大出身者が教えるレゴ作品の新作アイデア発想方法>>

MOCは自由ですが、自由すぎると人は動けなくなります。建築MOC、ジオラマMOC、テクニックMOCなど、大まかな方向性を意識するだけで、判断基準が生まれます。Keibricks的に特に重要なのは建築MOCで、外観・内装・ミニフィグという三層構造を意識することで、作品は一気に「鑑賞に耐える」ものになります。

ぬぬつき氏作品

ジオラマMOCはサイズを抑えつつ世界観を表現でき、展示や写真にも強いジャンルです。テクニックMOCは難易度が高い分、構造理解が深まり、レゴという素材そのものへの理解が進みます。どれが正解という話ではなく、自分が長く触っていられる方向を見極めることが重要です。

Theo氏作品

意外に思われるかもしれませんが、MOC制作で最初に決めるべきなのは「何を作るか」ではなく「何を作らないか」です。サイズ、ディテール、色数、可動要素。すべてを盛り込もうとすると、必ず破綻します。机に置けるサイズなのか、32×32スタッドで完結させるのか、展示前提なのか。この上限設定が、設計を助けます。

制約は創作の敵ではありません。むしろ制約があるからこそ、工夫が生まれます。MOCが途中で止まる最大の原因は、技術不足ではなく「制約を決めていないこと」です。

展示前提であればキャリーケースに入るか、輸送中に壊れない強度があるかも考える必要があります。

TANAPON氏作品

ミニフィグは飾りではありません。視点を与える装置です。ミニフィグが立つことで、建物の大きさが決まり、空間の用途が定まり、時間の流れが生まれます。窓から身を乗り出す、階段を駆け下りる、道具を持って作業している。こうした一瞬の動きが、MOCに物語を与えます。

ミニフィグの配置を考えることは、建築で言えば人の動線を考えることに近い行為です。だからこそ、MOCは「人を入れた瞬間に完成度が跳ね上がる」のです。

スタッキング、オーバーラップ、スタッガー、SNOT。これらは技術というより表現の語彙です。言葉を知らなければ表現できないのと同じで、組み方を知らなければ形にできないものがあります。ただし、すべてを一度に覚える必要はありません。一作品につき一つ試す。それだけで十分です。

KK氏作品

特にSNOTは、初心者にとって「世界が変わる瞬間」を与えてくれる技法です。横向きに一箇所使うだけで、レゴは一気に“ブロック感”から解放されます。

BrickLink Studioは非常に強力なツールですが、万能ではありません。最初からデジタルで完璧に設計しようとすると、手が止まります。実物で組み、詰まった部分だけをデジタルで検証する。この往復が、最も現実的で、継続しやすい使い方です。

MOCは完成した瞬間がゴールではありません。写真を撮り、展示し、誰かの目に触れたとき、初めて次の課題が見えてきます。「ここは弱い」「ここは伝わらない」「ここはもっと詰められる」。その気づきが、次のMOCを生みます。

レゴシ氏作品

MOCは、才能やセンスの競争ではありません。小さく作ること、改造から始めること、決断を自分で引き受けること。この態度を持ち続けられるかどうかで、続くかどうかが決まります。レゴを「組み立てる人」から「考えて作る人」へ。その境目にあるのが、MOCです。

最後までご覧いただきありがとうございました。それではまた!


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