レゴが好きな子どもは、将来どんな力を身につけているのか

「うちの子、レゴばかりやっていて大丈夫でしょうか?」

レゴが好きな子どもを持つ親であれば、一度は感じたことのある不安だと思います。説明書を見ずに延々と組み替えたり、完成したと思ったらすぐに壊して別のものを作り始めたりする姿を見ると、「遊んでいるだけに見える」「将来に結びつくのだろうか」と感じるのも自然なことです。

しかし、レゴという遊びを少し引いた視点で見ると、そこには学校の成績とは別軸で、将来の社会生活につながる力が数多く含まれています。本記事では、レゴ経験がどのようなスキルとして蓄積されていくのかを、親の立場から丁寧に掘り下げていきます。

レゴ好きが集まるオフ会の展示作品の様子

学校の勉強では、多くの場合「正解」が決まっています。早く、正確に答えを出すことが評価されます。一方、レゴには明確な正解がありません。同じパーツを使っても完成形は人それぞれで、途中で設計を変えても問題ありません。

この「正解がひとつではない環境」に慣れていることは、大きな強みになります。社会に出ると、答えが用意されていない課題に向き合う場面が増えていきます。そのとき必要なのは、正解を当てる力ではなく、自分なりに考え、より良い形を探る力です。レゴが好きな子どもは、遊びの中で自然とその思考姿勢を身につけています。

レゴで何かを作るとき、子どもは無意識のうちに多くの工程を踏んでいます。作りたいものをイメージし、使えそうなパーツを探し、組み立てながら修正を重ねていく。この流れは、大人の仕事で言えばプロジェクトを進める過程そのものです。

特に重要なのは、計画通りにいかないことが前提になっている点です。パーツが足りない、思ったより不安定、見た目が想像と違う。そうした問題が起きるたびに、「どう直すか」「別の方法はないか」と考える経験を積み重ねています。

この試行錯誤を繰り返す力は、以下のような形で将来に生きてきます。

  • 問題が起きても立ち止まらず、修正しながら前に進める
  • 失敗を「やり直しの材料」として扱える
  • 完璧でなくても途中段階を受け入れられる

これらはテストの点数では測れませんが、社会に出てから強く求められる力です。

レゴが好きな子どもは、完成した作品をあっさり壊します。大人から見ると「せっかく作ったのに」と感じるかもしれません。しかし、この行動には大きな意味があります。

それは、「作ったものは壊してもいい」という感覚が自然に身についていることです。一度作ったもの、時間をかけたものを壊すことに抵抗を感じる大人は少なくありません。その結果、改善点が分かっていても手を加えられず、同じやり方に固執してしまうことがあります。

レゴ育ちの子どもにとって、壊すことは後退ではなく次の一歩です。この感覚は、将来以下のような力につながります。

  • 失敗を過度に恐れない
  • 変化を前向きに受け入れる
  • より良い形を探し続けられる

レゴ遊びでは、立体を見て、回して、裏返し、分解する行為を何度も繰り返します。この経験によって、頭の中で形を操作する力、いわゆる空間把握力が自然と鍛えられていきます。

この力は、生まれつきの才能ではなく、経験の積み重ねによって育つものです。建築や工学、デザイン、ITなど、多くの分野で必要とされる基礎的な能力が、遊びの中で静かに蓄積されています。

「レゴには何時間も集中するのに、勉強は続かない」という悩みを持つ親も多いでしょう。しかし、これは集中力がないのではなく、集中できる条件がそろっているかどうかの違いです。

レゴでは、目標を自分で決め、方法を考え、結果がすぐに形として返ってきます。この構造があるからこそ、長時間没頭できるのです。将来、自分で意味を見出せる仕事に出会ったとき、この集中力は同じように発揮されます。

レゴが好きな子どもに対して、親ができる最も大切なことは、将来の結論を急がないことです。「何になるのか」「役に立つのか」と問い詰めるよりも、次のような声かけの方が、子どもの思考を深めます。

  • 「どうやって思いついたの?」
  • 「前より工夫したところはどこ?」

結果ではなく、考えた過程に関心を向けることで、「考えること自体に価値がある」という感覚が育っていきます。

レゴは特定の職業に直結する教材ではありません。しかし、どんな道にも進める思考の土台を作る遊びです。正解がない世界に慣れ、壊すことを恐れず、考え続けることを楽しむ。この積み重ねは、テストの点数よりも長く子どもを支える力になります。

もし今、「レゴばかりで大丈夫かな」と感じているなら、その時間は確実に将来につながる力として積み上がっていると考えてみてください。レゴで培われる思考力は、静かですが、確かな形で子どもの中に残っていきます。


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