──30年の空白と「思想の違い」、そして歴史的和解まで
「LEGO × Nintendo」と聞くと、現在ではマリオやどうぶつの森のレゴセットを思い浮かべる方が多いでしょう。
しかし実は、レゴ社と任天堂が公式にコラボレーションを開始したのは2020年が初めてで、それ以前には約30年近い空白期間が存在していました。
なぜ、世界を代表する玩具メーカーとゲーム会社が、これほど長い間手を組まなかったのでしょうか。そこには単なるビジネス判断ではなく、「遊び」に対する根本的な価値観の違いがありました。
結論から言うと、確執があったわけではありません

まず結論を整理しておきます。
- レゴ社と任天堂の間に、大きなトラブルや訴訟があったという記録はありません
- ただし、長年にわたって公式コラボが実現しなかった事実はあります
- 2010年代後半になり、両社の考え方が重なったことで協業が始まりました
つまり、対立していたというよりも、お互いに慎重すぎて距離を保っていた関係だったと言えます。
なぜ30年近くコラボが実現しなかったのか?

任天堂が守り続けてきたIP管理の哲学
任天堂は長年、自社IP(マリオ、ゼルダ、ポケモンなど)を非常に厳格に管理してきた企業です。
- キャラクターの造形が崩れること
- 世界観がユーザーの手で自由に改変されること
- ブランドイメージがコントロール不能になること
これらをブランド価値の毀損と捉え、特に自由な改変を前提とする物理玩具には慎重な姿勢を取ってきました。この方針は、任天堂のIP保護戦略として広く知られています。

レゴが大切にしてきた「改変こそが遊び」という考え方
一方、レゴは創業以来一貫して、
- 組み替えられること
- 完成形が固定されていないこと
そのものを価値としてきました。レゴミニフィグ文化に象徴されるように、キャラクターですら子どもが自由に役割を与え、壊し、再構築する存在です。つまり、
- 任天堂:完成された世界を守る
- レゴ:未完成な遊びを提供する
この思想の違いこそが、公式コラボが長年実現しなかった最大の理由でした。
実は競合していた時代もある:N&Bブロック
あまり知られていませんが、任天堂は1968年から1972年にかけて、「N&Bブロック」というブロック玩具を販売していました。

この製品は当時すでに世界展開していたレゴと競合しており、最終的には任天堂側が勝訴した訴訟があったことも記録されています。ただしこれは、
- 現代のレゴ社と任天堂の関係を直接示すものではありません
- あくまで「過去に玩具分野で競合していた事実」としての背景
として理解するのが適切でしょう。
転換点となった2010年代、両社が抱えていた危機感
レゴ側の危機:デジタル時代における玩具の存在意義
2000年代後半、レゴは経営危機とともに、子どもたちの「ブロック離れ」に直面しました。
- 子どもがスマートフォンやゲームに時間を奪われる
- 物理玩具だけでは選ばれなくなる
この経験から、レゴはデジタルとアナログを組み合わせた新しい遊びを本格的に模索し始めます。
任天堂側の危機:「遊びとは何か」の再定義
任天堂もまた、スマートフォンゲーム時代への対応に苦しみながら、
- ハードとソフトの役割
- 子どもたちの遊び方の変化
を改めて見直す必要に迫られていました。

この時期、両社は共通して「遊びの本質とは何か」を問い直していたのです。
歴史的和解の象徴:LEGO Super Mario(2020)

こうして誕生したのが、2020年に発売されたLEGO Super Mario シリーズです。このシリーズには、両社の慎重さが色濃く表れています。
- マリオはミニフィグ化されていない
- 表情はデジタルディスプレイで管理
- 遊び方はゲーム的なルール設計
これは、レゴが任天堂に最大限配慮し、任天堂がレゴに一歩歩み寄った妥協点だと言えるでしょう。このシリーズは、数年にわたる共同開発を経て完成したことも明らかになっています。
その後の展開が示す、両社の信頼関係の変化

LEGO Super Mario の成功以降、
- NES(71374):大人向け・鑑賞性重視
- どうぶつの森:世界観再現を優先
- ゼルダの伝説(2024):ついに核心IPが解禁
と、任天堂IPの扱い方が徐々に変化していることが分かります。これは単なる売上の問題ではなく、両社の思想的な距離が確実に縮まった証拠だと考えられます。
まとめ:レゴと任天堂に過去何があったのか
- 大きな確執や対立があったわけではありません
- 長年コラボがなかった理由は「価値観の違い」です
- 2010年代に「遊びの再定義」という共通課題が生まれました
- LEGO × Nintendo は、玩具史とゲーム史における思想的和解です
今後、より自由度の高い任天堂IPのレゴ展開が実現する可能性も、十分に考えられるでしょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。それではまた!
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出典・参考文献
- Wikipedia
- 「Lego Super Mario」
- 「N&B Block」
- 「Intellectual property protection by Nintendo」
- Nintendo Fandom
- 「Lego Super Mario series」
- GoNintendo
- LEGOと任天堂の共同開発に関するインタビュー記事

