《後編》芸大や美大ってどんなことを学ぶところ?【LEGO】

こんにちは、Keiです。ものづくりが好きなレゴビルダーの学生のために、将来を一緒に考える記事です。

「私はものづくりが好きだけど、どんな仕事が自分に合っているのかな?」という方は最初にこちらの前編の記事をご覧ください。

変わり始めた日本の労働

日本は長い間、良い大学に入って大企業に就職すれば一生安泰だと親や先生に教えられてきました。

しかし、ここ数十年で「日本には銀行法というものがあり、この法律によって銀行は政府から保護されていて絶対に潰れないので、銀行に入れば食いっぱぐれない」なんて話はもうとっくに日本昔話となっています。

大企業といわれる会社に入れたとしても生涯の面倒はみてくれませんし、ぶっちゃけてしまうと自分の身は自分で常に切り開いていくしかありません。時代は変わり続けています。そのために10代の頃から自分で考え、強い意志を持つ持つマインドが欠かせません。

もちろんしっかり目標を持てたからといって、例えば美大を卒業してアートで身を立てられる人はほんのわずかですし、デザイナーとして自分の好きな仕事だけで生活していける人もほんのひと握りです。

ただ、将来好きな道を諦めざるを得ないことがあったとしても、若いころに抱いた自分だけの夢を胸に一心不乱に努力を続けた経験は決して無駄にはなりません。そのコツコツとやりきった強さがあなたの自己肯定感につながるでしょう。そして、そこで見つけた自分の強みが新しい夢に自分を引っ張り上げてくれるはずです。

クリエイティブの話に戻すと、残念なことに日本ではいまだに「美大に行っても食べていけない、職にありつけない」という風潮が蔓延しています。しかし実際はどうでしょう。外資系コンサルティング会社やグローバル企業、そしてゲーム会社などは年々美大卒業生の採用枠を拡大しているのです。(もし親御さんがこの記事を見てくださっているなら、お子さんが、「美大に行きたい」と言ったら儲けものかもしれません。)

クリエイターとしての基礎を学ぶなら独学か学校か

たまに用事で学校訪問をすると「クリエイター志望なんですが、専門的な学校で勉強をしたほうがいいですか?」と訊かれることがあります。言い換えると、「専門の学校に行かなくても独学でクリエイターになれますか?」と聞いてきている質問です。

お絵描き

もちろん独学だってクリエイターになれます。これは間違いありません。これはクリエイターに限らず一生懸命勉強すれば国家試験だろうが独学で受かるでしょう。必要なことを全部ひとりで勉強しようと思ったらそれはかなり大変な道のりです。独学をする場合と先生に教わる場合とでは、最終的には同じ結果にたどりつくとしても、そのためにかかる時間がおそろしく違ってきます。

もう一つとても重要なことは、クラスメイトがいるということです。

クラスメイトがいると何がいいのでしょうか。モノづくりを仕事にしたい仲間と同じ釜の飯を食いながら刺激をもらうのと、一人でコツコツやっていくのは状況が全然違うものです。仲間がいるということは人と自分を比較できる環境にあるということです。他の人がつくったものを見れば刺激も受けるし、なにより単純に自分とその人ではどっちがかっこいいかとか、どっちがうまいか下手かというのが丸見えになって努力するモチベーションが上がるのです。

専門学校か大学か

具体的に夢がもう決まっているなら専門学校でもいいでしょう。さっさとスキルを短期間で身につけて社会で即戦力として働くことができます。

しかし、「自分がどうなりたいか決まってないからできるだけ選択肢を広げたい」「もっと色々なジャンルを勉強したい」「しっかりと専門分野を学ぶ時間が欲しい」というのであれば大学進学をお勧めします。また最終学歴は後々の影響も大きくなるので、長期的にどちらが自身の仕事内容に影響してくるかを考えて選ぶといいと思います。

貧困家庭でお金がないといった事情を持つ方もいると思いますが、日本には様々な支援制度があるので進学を諦めてしまう前に一度調べてみましょう。

大学では4年間という自分を見つめ進路を決める時間を持てます。専門学校は一つの分野に特化している分、「他に自分に向いていることが見つかった」としても進路変更がしにくいというデメリットが存在し、その点では大学は学びながら自分のやりたいことを特化して突き詰めることが可能です。しかし、この4年間を無駄に過ごすか、悩みながらでも自分の力にしていくかは結局あなた次第になってきます。

また、そこで過ごす仲間の存在が大きくなります。やはり難関大学に入ると高いレベルで刺激し合う仲間が同級生になります。落ち込むことも多いですが、一生高め合える大切な友達でありライバルと出会えるはずです。

デザインの現在地

10年ほど前はデザインという言葉から連想されるものとしてグラフィックデザインやファッションデザイン、プロダクトデザイン、建築デザインなどの「目に見えるアウトプット」のみがイメージされていました。

ところが、現在ではさまざまな分野にデザインという言葉が頻繁に使われています。例えばサービスデザイン、ユーザーエクスペリエンスデザイン、スペキュラティブデザインなど、目に見えない「考え方」や「プロセスそのもの」、あるいはそれらが持つ「意味」などにも「デザイン」が接続・運用されてきています。

ここ数年、デザイナーやアーティストが持つ思考の方法や体系をビジネスの分野でも活かしていこうと、さまざまな団体・機関・法人の経営者がデザイン思考やアート思考といったものを取り入れようとしています。

美大芸大は何を学ぶところ?

実際に僕が通っていた芸術大学では、発想力・計画力・造形力・伝達力を鍛えます。最低限の画力が受験時に必要なので、合格者はすでにある程度の画力は持って入ってきているからです。入学後は画力を伸ばすというよりも、その自分のスキルをどう扱うかを知っていくのです。

もちろん画力を鍛える授業を積極的に取って作家を目指す学生もいます。ヌードデッサンや塑像があったり、伝統工芸品修復などいかにも芸大らしい授業が盛りだくさんです。僕は仏像美術や焼き物、人体解剖学の授業がお気に入りでした。西洋美術史は睡魔との戦いでした。笑

デザイン学部では1年生でデザイン理論や基礎力を身につけ、2〜3年生で専門領域を深掘りし、4年生は次のステップへ向けて自身の方向性を固めて動きます。

美大だからと言って美術の勉強だけではありません。一般の大学と変わらない英語やフランス語といった学科授業も必須科目としてありますし、教員を目指す学生には体育や教育学なんていう一般教養科目もあります。

実技の授業では鋳造や印刷といった技術も数多く学べますが、それ以上に課題解決の突破力を学んだような気がします。エナジードリンク片手に課題に追われていたのも良い思い出です。

ちなみに男女比は9:1でほぼ女性が圧倒的数です。僕の年の男は5人でした。ハーレムと言えばハーレムですが、依怙贔屓して女性を敵に回したら悲惨な学生生活になります。笑

美大芸大卒業後の進路は?

卒業後の進路は大きく2つで、企業に属すファイン系(商業的美術)か、個人事業主として食べていくアート系(作家)の進路があります。アート系の職業は画家のほか、伝統工芸の伝承となる職人などアーティストと呼ばれる人たちです。

現在はファイン系に進む学生が多く、企業のクリエイティブ部門のほかデザイン事務所やプロダクション、メディアコンテンツ作成、芸能やイベント関連といった企業への就職が主な進路です。有名な芸大美大ともなると在学時に大手企業からヘッドハントされている学生もいます。

美術系大学にも一般大学と同じくランクというものが存在します。個人的主観ですが、表にまとめてみましたので参考にしてください。

まとめ

いかがでしたでしょうか。ものづくりが好きな方が、自分の将来を考える時の参考になれば幸いです。

一般的に大学受験というと、偏差値に応じた大学選びを行うことになります。しかし、残念なことにこの受験偏差値の基準が芸大美大受験にはまったくあてはまりません。もちろん一定の学力も必要ですが、それ以上に表現力が重視されています。全国のさまざまな高校から多種多様な学生が入学するのが芸術大学です。

僕の学生時代も農業など専門学科高校から全国的に知られた超進学校までさまざまな同級生がいました。一般の大学では同じような受験偏差値の人が集まるので、それぞれ学校ごとにカラーや特徴が出ます。一方でこの偏差値教育を「越境」した人たちが集まる芸術大学には、当然のことながらさまざまな考えを持った人々が集います。偏差値を超越した人々の学び舎は極めて多様性が高く、究極のダイバーシティ学校といえるでしょう。さまざまな価値観の人とクリエイティブ活動を行うことは大きな刺激になるはずです。

最近ではデザイン思考を学ぶためにビジネスパーソンの中でも美術系の大学院に入学し、修士の取得を目指している方々が増えていると聞きます。入学生の目的も様々で、こういった多様な価値観が集まる大学で学べるのはとても楽しいことです。今後の社会を指し示していくのはアートの世界かもしれませんね。

レゴラーにオススメする職業10選の記事もありますので合わせてご覧ください。

最後までご覧いただきありがとうございました。それではまた。

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