「遊び」が未来を拓く:LEGOグループ2024年次報告書に見る持続可能な成長のかたち

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本記事は、2025年3月11日にレゴホームページに掲載された2024年版「LEGOグループ年次報告書2024」の要点を日本語でまとめたものです。

「遊びはすべての子どもにとって基本的な権利である」──この理念を掲げるLEGOが、いかにして世界中の人々に価値を届けているのか。本記事では、LEGOグループの2024年の歩みを読み解きながら、企業としての「未来のつくり方」に迫っていきます。

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2024年のLEGOグループは、世界の玩具市場が1%縮小する中で、前年比13%増の743億デンマーククローネ(約1.6兆円)の売上を記録しました。営業利益は10%増の187億DKK、フリーキャッシュフローも47%増の102億DKKと、すべての主要指標が過去最高を更新しています。

特筆すべきは、成長の内実です。単なる商品展開の強化にとどまらず、店舗体験の質向上、デジタル領域との連携、持続可能な製品開発など、複合的な施策が功を奏しており、LEGOのビジネスモデルがいかに現代的かを物語っています。

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LEGOは2024年、製品に使用する素材のうち50%をサステナブルな原料に切り替えました。そのうち約33%は再生可能資源由来、さらに3%は分離供給されたリサイクル素材(透明パーツなどに使用)です。

また、包装に関しても93%が紙ベースとなっており、4年連続でこの基準を達成しました。チェコ、デンマーク、中国などでは太陽光発電の設備も拡張し、再生可能エネルギーの導入が加速しています。

「サステナブルな未来を子どもたちに残す」ことを掲げ、LEGOは素材やエネルギーの面からも企業責任を全うしようとしています。

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LEGOはデジタル戦略においても大胆な進化を遂げています。特に注目を集めたのが、ゲーム「Fortnite」とのコラボレーションです。2023年末に開始したLEGO Fortniteは、8700万人以上のプレイヤーに遊ばれ、2024年には物理的なブロックセットも発売されました。

さらに、LEGO Playアプリが500万回以上ダウンロードされ、子どもたちが自分の作品を友達と共有したり、デジタル上で創作活動を楽しんだりと、新しい「遊びの場」が広がっています。

社内でもAIを活用した在庫予測やサプライチェーン最適化が進められており、LEGOは今や「ブロック企業」ではなく、「デジタルと体験を統合したブランド」となりつつあります。

LEGOグループは2024年、74店舗を新たに開設し、全世界でのブランドストアは1,069店に達しました。特にジャカルタにオープンした東南アジア最大のLEGOストア(365㎡)は話題となり、ブランド体験の場として多くの人々を魅了しています。

各店舗では、季節イベントやクリエイティブワークショップ、LEGOデザイナーとの交流など、「製品を売る場」ではなく「遊びとつながる場」としての役割を果たしています。

また、LEGO Insidersという会員プログラムも拡充され、よりパーソナライズされた体験が提供されるようになっています。

LEGOグループでは、従業員のウェルビーイングと多様性への取り組みも強化されています。2024年末時点での社員数は31,282名と前年から10%増加。社員満足度スコアは81と、目標を上回る数値を記録しました。

また、見えない障がいを持つ社員をサポートする「サンフラワーラニヤード」の導入や、更年期支援プログラムの拡大など、インクルーシブな働き方の実現にも積極的です。

このような文化の根幹には、「Leadership Playground(リーダーシップ・プレイグラウンド)」という哲学があり、「勇気・好奇心・集中力」を軸にした人材育成が推進されています。

2024年6月、国連総会は「国際プレイの日(International Day of Play)」を正式に採択しました。これは、LEGOグループが長年にわたって主張してきた「遊びの権利」を国際社会が正式に認めた象徴的な出来事です。

LEGOは単なる玩具メーカーではありません。遊びを通じて子どもの創造性や学びを支援し、社会全体にポジティブな影響を与える「教育的存在」として、今や世界的な影響力を持つ企業となっています。

LEGOは2025年の見通しについて、売上の1桁台成長を見込んでいます。しかし、これは「守り」ではなく、むしろ「土台づくり」の年と捉えることができます。

ベトナム工場(2025年稼働予定)、米国工場(2027年稼働予定)といった中長期的な投資が進められており、LEGOは次世代の市場環境にも対応できる柔軟な供給体制を整えつつあります。

LEGOは、「遊び」を通して世界を変えるブランドです。その根底にあるのは、ただの企業活動ではなく、「子どもたちの未来に責任を持つ」という明確な信念です。

企業としての成長と、社会的意義の両立を見事に体現するLEGOグループ。その2024年の歩みは、持続可能なビジネスの在り方を考える私たちにとって、確かなヒントを与えてくれるものでした。

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